ふたつの愛し方
医局をノックして、ドアを開けてー…ーこんにちは。


そこにいた俊也と田中先生の視線が私に向く。


お疲れさまです、と田中先生に声を掛けて、一目散に俊也の隣へ。


「お疲れさま。頼まれてた薬は、ナースステーションの看護師さんに預けてきたよ!」


「お疲れ、ありがとう。立花には会わなかった?」


「会ったよ。俊也を落とした攻略法を教えてって言われた」


なんだそれ?と、眉間に皺を寄せた俊也に、丸投げしたからね、と。

聞かれると思うよ、私に惚れた理由、と答えて、隣の五十嵐先生のデスクの椅子に座る。


「美和に惚れた理由な……答えとくよ」


俊也が頭を撫でて言ってくれて、よろしく、と返すと、、、

俺も知りたいです、と向かいの席の田中先生が割り込んできた。


私も知りたい!

瞳で訴えてみると、深い溜め息を吐いて…ー…、


「敢えて、ひとつだけ上げるなら……真っ直ぐに俺を好きでいてくれるとこかな」


ものすごく優しい瞳で言ってくれて、デスクの下でそっと手を握ってくれた。

ごちそうさまです、と笑った田中先生は、気を付けた方がいいですよ、と。

立花さんは高橋先生と……ヨリを戻したくて戻って来たって言ってたので、と。


「協力してって言われたんで、無理だって言っておきましたけど」


「ありがとうございます」


田中先生に軽く頭を下げると、ちょっと休憩してきます、と気を使ったのか医局を出て行って、俊也と二人きりになる。


隣に座る俊也を見つめると、恥ずかしい事を言わすな、とほんのり顔を赤らめて微笑んでくれる。

だから微笑み返して、嬉しかったよ、と。

指を絡めて繋ぎ直すとギュッと握ってくれてー…、


「わざわざ医局に来たのは、俺に逢いたかった?」


うん、と答えると、意地悪く口角を上げて微笑むんだから……今度は私が顔が紅く染まってしまう。

それを、可愛い、と。

俺も逢いたかった、と甘い声で言ったかと思うと、首の後ろに腕が回って引き寄せて触れるだけのキスをくれる。


「医局だけど……」


見つめたまま告げると、キスしたくなった。

帰ったら、こんなキスじゃ終わらないからな。


もう……二人きりの時だけに見せる、甘い俺様発言が好きだから、有無を言うことは出来なって頷いてしまう。



今日は少し遅くなるけど待っててくれよ?

うん、待ってる。頑張ってね。

ああ、美和もな。


私から触れるだけのキスをして、大好きだよ。

俺も、と返されて、名残惜しさを残したまま俊也から離れて、そこを後にした。
< 110 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop