ふたつの愛し方
その日、帰ってから美和に話をした。


「俺は1ヶ月だろうと何ヵ月だろうと、美和以外を好きにならない。必ず1ヶ月で帰って来る。待っててくれる?」


「……待ってる……寂しいけど私を守るためで……諦めてもらうためだってわかってるけれど……俊也が言ってくれた約束は嘘にしないで?」


その約束は、美和以外は抱かないって言ったことだろう。

嘘にしないよ、と答えると笑顔くれたけれど……まだ不安そうで。


「逢いたくなったら院長室へおいで。俺のスケジュールは医局のボードを見ればわかるし、田中に院長室のスペアキーを渡してあるから、田中に俺へ連絡してもらって?」


わかった、といつもの笑顔をくれてーー…

今日も明日も明後日まで、たくさん俊也をくれる?


「当たり前だろ。1ヶ月分、美和に俺をあげる」


そのために、俺以外に出来る仕事は田中と五十嵐に押し付けてきた。

3日間だけはなるべく早く帰りたい、と。

事情を説明して、協力してくれ、と。


立花さんの性格はわかってるんで、と言ってくれた田中。

仕方ないですね、と五十嵐。

二人には必ず、この借りは返すよ。




何回も何回も身体の全てにキスをして、目には付かない至る所に紅い跡を残す……美和が少しでも寂しくないように。


この身体も心も、俺の全ては美和のものだ。

3日間ーー…数え切れないくらい、美和を抱きながら言い続けた。

美和が不安に押し潰されないように。

そしてーー…、愛してる。

今はもう心から伝えられる、大好きに代わる俺の想いも一緒に。


明日からという夜に、、、

俊也が私のって証。

心が通う場所に、と左胸に紅い跡を残してくれた。

同じ位置に俺も。
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