ふたつの愛し方
だけどね……少し痩せた?


ただでさえ、細い俊也の身体が……1週間前より華奢になった気がする。


「……かもな……美和の飯じゃないと、あまり食べる気にならない」


「もう……ちゃんと食べてよ。実はね、お弁当作って来たの。今日は夜勤なんでしょ?好きな時に食べてね」


「ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい」


腕の力が弱まって俊也を見上げると、下唇が切れてる、と舌先で舐められて……
涙を我慢した?

だって、だって……


「俊也の胸でしか泣きたくないもん。一人で泣いても……余計に辛くなるもん」


ごめん、と呟いた俊也の唇がゆっくりと重なって、何度も角度を変えて深くなっていく。

1週間ぶりに触れる俊也の温もりと、馴れ親しんだ柔らかさの唇に、徐々に理性が吹き飛んでしまいそうで……

背中を叩くと唇を離してくれたのに、もう少しだけ、と頭を撫でて、私の答えを待つことなく…ーーまた唇が重なった。

今度は、上唇と下唇を食みながらのキス。

はぁ……俊也のこのキスが一番好きかも。

今までなら、当たり前だったキスなのに……たったの1週間してないだけで、好きなキスが身に染みてわかった。

俊也とまたこうして立花さんの目を盗んで逢えたら、帰って来たら、このキスを
たくさんー…おねだりしよう。


それから、30分くらいだけど他愛ない話をしてーー…、

名残惜しいけど、私も戻らないとパートさんが帰る時間に間に合わない。

今日は、無理言って残ってもらってるから。



また逢える?

逢う時間は必ず作るよ。美和も逢いに来いよ?

うん!絶対に来る。愛してるよ。

俺も愛してる。


今日、逢えた最後にーーもう一度、あのキスをしてくれて、俊也が大好きだって言ってくれた笑顔で……またね。

またな。

バイバイは言わない、絶対に。

終わりのような気がするから。

俊也だって、そうだよね?
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