ふたつの愛し方
その日の深夜、眠れずに起きているとー…。


“起こしたらごめん。お弁当旨かった。ご馳走さま。やっぱり美和の作った飯がいい。それから美和と同じ匂いが、一番落ち着く。次に逢える時まで持ってきてくれたタオルは洗えないな(笑) ゆっくり休めよ。俺も少し仮眠する。おやすみ、愛してる”


こんな何度も読み返したくなる、LINEをくれた。

きっと、タオルを握り締めて寝てくれるかな。


直ぐにでも返したかったけれてど、俊也に余計な心配は掛けたくないから……翌朝に返事を返した。


“おはよ。私が愛情いっぱい込めて作ってたんだから当たり前でしょ(笑) また作って、田中先生に渡しておくね。私も今は、俊也のTシャツを握り締めて眠ってるよ。俊也に抱き締められてるみたいで、安心するの。無理せずに頑張ってね。愛してる”、って。


薬局に着いてから確認すると、既読が付いていて、返事はなくても読んでくれただけで嬉しい。

どんな表情で読んでくれたんだろ?

少しでも笑顔になってくれたかな?

考えるだけで、自分でもニヤけてるのがわかるくらい顔は緩んでる。



その翌日には、もう逢いたくて。


俊也が居ない部屋は広すぎる。

俊也が隣に居ないベッドは広すぎる。

俊也と一緒に浸かれない湯槽も広すぎる。

何もかもが……広く感じて寂しいよ。


1ヶ月って今までは、あっという間だったのに……長すぎるよ。

あと、20日もあるんだよ。

休みの日に、自分がどうやって1日を過ごしていたのかさえ、俊也が居ないとわからないよ。

ただ……ボーッとして、一人で買い物に出て、休日が終わるよ。

一人で過ごす休日は好きだったのに、今は嫌い。


真っ暗な、誰も帰って来ない部屋に帰って来てーー…、ソファーに倒れ込んで、こんな弱気な事を考えていた。


朱希は、よく耐えたね。

1ヶ月処じゃなかったのに……弱音も吐かずに。

本当に朱希は、私なんかよりずっと強い。

私は……1ヶ月だけなのに、もう辛いよ。

寂しいよ。

朱希……どうしたらいい?

届くはずもない声が、静か過ぎる部屋に響いて……消えた。
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