ふたつの愛し方
Episode:19
《麻友》


1ヶ月のお試しみたいな期間を与えられて、早いもので半月が過ぎていた。

何をしても素っ気ない。

キスだって俊也くんからは絶対にしてきてくれない。

私の身体だけじゃなく、やっぱり触れたいよ、もっと。

だから、キスをしながら俊也くんのモノにズボン越しにー…触れただけで、触るな、と肩を押されて、腕を取られた。


どうして?

俺の身体は美和以外にはあげない。


見たことがない恐ろしく冷たさを宿した瞳で言われたら……何も言い返せない。


それでも……彼が欲しい。


心は身体を繋げれば……

甘いな。義務行為、欲の捌け口。
それが当たり前のように、あの時は麻友を抱いてた。
何が言いたいかわかるだろ?


そうか……心から彼女を愛してるから、そんな私利私欲で出来ないってこと。


それなら……

だいたいわかったよ。だったらせめて……あと半月は一緒に居てくれない?


涙を流す私の涙に触れることもせずに……


俺の身体を奪えばなんて、心でぶつかって来ようとしない時点で……どんなに麻友が足掻いても俺の心は動かない、と。

残念だったな……半月、ありがとう。

終わりだ、と。


私の負け………

彼女は、きっと心ごと俊也くんにぶつかって行ったんだ。

ただ我夢者羅に、好きって。


溢れて止まらない涙を堪えきれずに、俊也くんの寝転がったままの胸に、倒れ込んだ時…ーー、

枕元にあった俊也くんのスマホが、短い音を出した。

LINEかメール?

それを、確認した俊也くんは一瞬だけー…瞳を見開いて、どけ、と。

その声が余りに冷たくて身体を起こすと、勢いよく起き上がって、、、

近いうちに荷物は取りに来る、とだけ告げて……

鞄を持って、出て行こうとする。

待って、と引き止めて、彼女の所へ?


この感じは、間違いなくそうよね。

病院からなら電話だと思うし。

何も答えずに振り向いて、バイバイ。

ドアの向こう側へ行ってしまった……


バイバイか……終わりの合図。

閉められたドアを見つめたまま、玄関に座り込んで……声を上げて気が狂ったように泣いていた。
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