ふたつの愛し方
Episode:3
「中村さんは皆さんが知っているように、この病院で働いていました。ニューヨークでオペ看としての経験も充分です。中村さんには、ここで指導看護師をしてもらいます。皆さんいいですね?」


林さんが日勤から夜勤の申し送りの時に、今ここにいる看護師さん達にそう言って、改めて宜しくお願いします、と頭を下げる。


日勤の看護師さん達が出て行った後、私を知っている西山さんが、

おかえり、待ってたよ。


「ただいま。北河先生に戻って来いって……言われて」


「たしか、北河先生と高橋先生とは幼なじみなんだよね?」

うん、と答えると、

二人ともイケメンだし腕はいいよね。

どっちがタイプ?

西山さんに訊かれて、一瞬考えてしまう。


私は英介が好きだけど、どっちがタイプってわけじゃない。


だから、二人をそんな瞳で見たことないから。

正直に答えると、私は高橋先生だな。


「そうなんだ……相変わらず二人は、ここ以外の看護師さんからも人気なの?」


「もちろんよ!高橋先生はこの前、ロッカールーム前で告白されてるの見たし。北河先生を好きって話もチラホラ聞くよ」


西山さんの答えに、何だか複雑な気持ちになる。

俊也も高校も大学も彼女が居たんだけど、3人の時間は大切にしていた。

週に一度は3人で、俊也の家で勉強をしたり、遊びに行ったり。

大人になって社会人になった今、どちらかに彼女が出来たら……3人の時間は失くなっちゃうのかな。

英介と私の関係が俊也に知られて、失くなるよりも寂しいかもしれない。

欲張りなのはわかっているけれど、英介を好きなのに俊也が私だけを、甘やかしてくれなくなるのも嫌。


ずっと……ずっと3人で居られない事はわかっていても。


強がっていても弱い私は結局、2人に甘えてる。

< 12 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop