ふたつの愛し方
鍵を掛けて、靴を脱ぎ捨てーー…美和っ!!と玄関で呼ぶが返事がない……


慌ててリビングに行くと、ソファーの上で踞って、荒い呼吸を繰り返している。

まさか………過呼吸!?

鞄を放り投げて、美和!


ソファーに座って膝の上に横抱きにして、片腕で支えてお腹に手を添えて。


「ゆっくりゆっくり、落ち着いて息を吐いて」


腹をそっと擦ると、言った通りに息を吐いてくれる。


そうだ、次は10数えるから息を止めて。


10秒息を止めて、吸ってゆっくりと吐くを繰り返すように促すと、息も落ち着いてきた美和は俺を瞳に映して……

弱々しく、俊也、と呟いた。


「ああ……ごめんな……たくさん我慢させた」


大きく首を横に振った美和は、俺の首に腕を回してしがみついてくれるから、支えるように抱き締めて背中を擦る。

大丈夫か?と。

腕の中で小さく頷いてから、ごめん、と。

我慢出来なくて、と言った声は弱々しい。


「美和……俺を見て」


頭を撫でると、首に回された腕を解いて、俺に跨がって瞳を合わせてくれた美和に、、、


「ただいま。もう終わりにして来た。美和の所へ毎日、帰って来る。もう二度と辛くて苦しくて、悲しい想いはさせない。本当にごめんな……愛してる」


伝えたい想いは、まだあるけれど今は美和を安心させる言葉が最優先だ。

これくらいでいい。

おかえり、と瞳に涙を溜めている美和に、我慢しなくていいよ。


「溜めてた分、泣いていいよ」


そう促すと、嗚咽交じりに声を上げて泣くから……背中を擦りながら、

落ち着いて、と。

また過呼吸になるぞ。

大きく首を振る美和に、もう息は苦しくない?

苦しくないよ、と泣きながら答えた美和に、一緒にベッド行こう。


「……いっぱいキスして……いっぱい話聞いてくれる?」


「美和の好きなキスをいっぱいするよ。話したかったこと全部、聞くよ」


うん、と頷いた美和を抱き上げて、立ち上がる。


ベッドに美和を下ろして、着替えてから一緒にベッドボードに背中を預けて、美和の肩を抱く。

そして、美和の色んな話を聞いてー…ー、

美和が好きな上唇と下唇を食むキスを、求めてくれるだけ応える。


愛してるよ、美和。

どれだけ言っても足りないくらい。
< 120 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop