ふたつの愛し方
英介と話をした日から、いかにも初夏らしい澄みわたる空が広がり始めていた。


呑まない。

避妊しないと言ったけれど……

英介は、ちゃんとしてから、とまだ避妊をしてくれている。

いつも急に何かを勝手に決断して、報告は後回しなくせに、、、

この件は別だ、と。

下手すれば朱希の命が関わる、なんて言われたら……何も反論できなかった。

全ての準備を整えて、準備万端な状態にしないと落ち着かないらしい。


そして、、、初夏の私の誕生日ーー。


珍しく休みが重なり、ベランダで。


今日は暑いな……と空を見上げていた私の背後から英介に抱き締められて、左手を取られたかと思うと、薬指に指輪が嵌められた。


「……英介……これって……」


「誕生日おめでとう。これか……誕生日プレゼント」


そう言って指輪にキスをして、背後から抱き締めた腕を解いて、朱希、と呼ぶから、ん?と英介を見上げて瞳に映して、英介の腰に腕を回すと…ーー、


俺を……生涯……支えて欲しい。

医療の道をまだまだ突き進むために、病院を守るために、勝手に様々な決断をすると思う。

それでも……俺に着いて来てほしい、どこまでも。

俺が生涯、愛し続けるのは朱希だけだ。


英介らしい、プロポーズの言葉。

瞳からは涙が溢れ出して、英介の長い指に掬われて……


はい、英介を支えながら……どこまでも着いて行く。


まだ涙の止まらない私に、泣きすぎ、と笑った英介の唇が重なった。

何回か角度を変えて、下唇を食まれて離れていく唇。


「これ以上は……昼間から抱きたくなるからしないぞ」


名残惜しそうに、私が唇から視線を外せなかったからだよね。

昼間だろうと、朝だろうと抱いてたのに……何を今さら……

反論しようと私から唇を重ねて、同じキスを返す。


「……したい……ダメ?」


「……っ……その上目遣いは反則だ」


フワッと身体が宙に浮いて、昼間の陽射しが射し込むベッドで肌を合わせる。


ダイヤが埋め込まれた婚約指輪に、キスをして……愛してる、と言ってくれた時に、英介と歩む未来が輝いて見えた。


私も……愛してるよ……英介。
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