ふたつの愛し方
お昼過ぎから愛し合ってー……

まだベッドで、擽り合って、キスをして戯れていたのに……

リビングから、お互いの着信音がハモるように響いている。


これってーー…緊急呼び出しコール。


同時に言ってしまったから、額を合わせて微笑み合って、飛び起きてリビングに駆け出す。

お互いに下着だけを大急ぎで身に付けて。


電話を受けながら、指輪どうしよう、と冷静に考えていて……

着替えながら英介に訊ねてみると、首に掛けとけ、と。


仕事中はこれで。

わかった、英介は?


実は、英介もペアのダイヤが埋め込まれた対になる、指輪を左手薬指に嵌めていて……気づいたのはベッドで指を絡めたとき。


俺も首から掛けとく。


イスラエルで10歳の女の子が、お父さんが大切な人にあげなさい、と戦火に旅立つ前にくれたチェーンだけのネックレス。

英介に恋をして、先生のお守り、とくれたもの。

私にも、おばあちゃんの肩身だという小さな赤い石の付いたネックレスに、いいの?と訊くと女の子は、お母さんが大切なお友達が出来たらあげなさい、と言ったと笑いながら、お姉ちゃんにもお守り、と。

お母さんも、もらってあげて下さい、と言ってくれて頂いたもの。


あの日以来、英介も私もずっと身に付けている。


お互いに御守りが一つ増えたな、とチェーンに通して着け直して、指輪をギュッと握り締めて、行くか、と触れるだけのキスをくれた。

私も指輪を握り締めて、英介の手を取って、病院へ駆け出した。
< 125 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop