ふたつの愛し方
朱希……籍を入れよう。

突然、あの事故から数日後にーー英介から言われ……

えっ?と間抜けな声で返していた。


「朱希との子供が欲しい。やっと準備も出来たのもあるが……父親になる覚悟が定まった」


きっと英介の中で、まだ迷いがあったんだね。

医者として、院長としての多忙。

果して、この病院で出産して退院までサポート出来るかの不安。

自分が親になるって覚悟があるか。



「うん……北河 朱希になる!」


飛び付いたせいで、英介をソファーに押し倒すしてしまうと…ー…笑いながら背中に回した手が、Tシャツの裾から入れられて……

身体を起こすと、静かなリビングにプチっと下着のホックが外れる音が響いた。


「ここで……するの?」


「ベッドがいい?」


大きく頷いた私の身体は、起き上がった英介の肩に担がれて、ベッドに沈んだ。


朱希……


今まで聴いたことのないような、優しい穏やかな低い甘い声で呟いた、英介の唇が重なってーー…


そこからは、止めどなく押し寄せる絶頂に震えて……溺れて……

久しぶりの煩わしい物がない、英介のモノを受け入れて……

一番お互いに感じる場所へ、熱い液体をくれた。



その日から、1週間後にお互いの両親に挨拶に行きーーー。

私の両親からは、朱希をよろしく、と。

英介の両親からは、二人で病院を頼む、と。

承認されて、大安吉日に私は……北河 朱希になった。
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