ふたつの愛し方
大学病院とは違い、この病院では救命の看護師も少なく、手術室の看護師も半数。

手術室看護師の私たちも自分達の業務の傍らで、兼任している。

術後の経過やケアも大切な仕事。


深夜ーーー救命センターのコールが鳴る。

慌ただしく緊急手術になった場合に備えて、救命の看護師さん達に任せて、手術室の準備に取り掛かる。


「今日の夜勤は、外科は北河先生と五十嵐先生だから、器械出しは朱希ちゃん。外回りは私達に任せて」


西山さんが手を動かしながら、そう言って、他3人の看護師さんに視線を動かした。

皆が頷いて、わかった。


「北河先生が、俺のオペの時の器械出しは中村だからって主任に言ったらしいし」


西山さんの言葉に、顔が熱を持つ。

英介がわざわざ、そんな事を言うなんて……嬉しい。


「朱希ちゃんと北河先生は、ボストンでも一緒だったから……チームワークは抜群よね!」


笑いながら言った西山さんにウィンクされる。

他の看護師さんの一人=佐々木さんに、そうなんですか、と。


「北河先生に認められるなんて……凄いです!私……よく怒られてたんです」


「佐々木ちゃんも優秀なんだけどね……北河先生のスピードがアップしたから」


西山さんが、そう言ったから確信した。

俊也が言っていた、優秀な器械出しは佐々木さんだって。


「私も……北河先生に着いていけるようにもっと頑張りますね!」


さっき、ちょっと嫉妬心を露にした瞳で見られたのは……佐々木さんは、英介を好きなんだね。

今の言葉で確信に変わった。

だけどね………ごめん。

英介は譲れない。


そんな感情を隠すように、小さく頷いていた。


「そうね。北河先生に朱希ちゃんが居ない時は佐々木さんって、言ってもらえるといいわね」


はいっ!

西山さんの上手な言い方に、元気に佐々木さんは頷いて、また準備を始めた。


そこへーーーコールが鳴る。

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