ふたつの愛し方
その1年後にーーー俊也と美和が籍を入れて、美和にそっくりな綺麗な顔の男の子=和也くんが産まれた。

私たちの間にも、英介にそっくりな女の子が産まれた。


お姉ちゃんになった心春は、妹の彩心(あやみ)を可愛がって、面倒を見てくれている。

美和が、和也くんを連れて来ても同じように接して、8歳の立派なお姉ちゃんになった。

俊也はメロメロの溺愛し過ぎるパパになって、英介も心春への愛情もそのままに、彩心も溺愛中。



「産まれても……心春への愛はそのままだ。血は繋がってなくても、パパとママの大切な娘だからな」


妊娠がわかった時に、英介は心春にそう話してくれた。

5歳で私たちの娘になった心春は、娘になった時点で理解はしているから、説明も多くの言葉も必要ない。


心春は笑顔で英介と私に抱き付いて、お姉ちゃんになるの嬉しいよ、と。

心春はパパもママも大好き、と言ってくれた。

そして、その時ーー…。


「本当のパパに会いたい?」


英介が訊くと、会いたくない、と悲しげに呟いた。


心春のママはシングルマザーで、交通事故で亡くなって身寄りもなく施設に来て数年過ごして、パパだと言う人が資金援助をしていたらしい。

だけどパパは既に妻子が居て、私たちの娘になった方が幸せだ、と承諾を得て、養子縁組をした。



「会いたくないよな……でも、いつか心春が大きくなって……パパに会いたいって言われたら会ってあげるんだよ」


心春を抱き締めたまま、英介は頭を撫でながら諭すように伝えてくれて、

そのときはパパとママも一緒がいい、と英介の胸に擦り寄って、もちろんだよ、と優しく答えた英介の胸で、大きく頷いた。

私は、そんな心春の頭を撫でていた。


ママが心春を庇って亡くなった。

会う時は一緒がいい。

どんなに大きくなっても消えない心の傷だから。
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