ふたつの愛し方
約4時間の手術後ーーー。

林さん達に片付けを俺からお願いして、着替えたら8階の仮眠室な。

英介も手術後の彼独自のルーティーンをしてから、待ってるからな、と朱希の頭にポンっと手を置く。


英介は患者さんの家族への、説明が終わってからってことで、先に応急セットと医局に寄ってパソコンを持って、8階の仮眠室に向かった。


術後のカルテを作成している所へ、英介に支えられて朱希が入って来て、ソファーに支えられたまま腰を下ろした。


英介が朱希に、足出して、とクロックスと靴下を脱がせると、少しだけ赤く腫れた足首。


「よく、こんな足で数時間も立ってたよな……」


英介が愛おしそうに足首を擦る。

だって……と言う朱希の隣で、頑張ったな、と頭を撫でる。

痛かったけど……頑張ったよ、と俺を見た朱希に、偉かったな。


英介が湿布を貼って、包帯で固定する。


「朱希のことだから仕事はするんだろうけど、無理はするなよ。治りが遅くなるぞ」


渋々と言った感じで頷いた朱希の、腕の傷と、他には?と英介に訊かれて捲り上げた膝の傷の処置が終わってから、何があった?と訊ねる。


「マンションの前で柴田さんに待ち伏せされてた。腕を掴まれたから、噛み付いて走って……病院に逃げる途中で転けた」


「怖くなかったか?」


「よくわかんない……咄嗟に噛み付いてたから」


跪いたままの英介が、足は速いのが幸いだったな。

これくらいで済んだ、と朱希の手を握った。


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