ふたつの愛し方
確かにな、昔から朱希は足が速い。

小学校では毎年リレーの選手に選ばれていて、中学校の時は陸上部で県大会1位だった。


「今回はこれで済んだけど、次はわからないから。GPSのアプリをダウンロードするぞ。俺と英介も常には一緒に居てやれないけど、もしもの時に助けてやれる」


「わかった。でも、警察にも連絡した方がいい?」


「一度くらいの深夜の待ち伏せだからな……動いてくれないだろ」


英介に、そうだな、と頷くと。

二人を信じて甘えとく、と笑った朱希に、1時間くらいは寝れるだろ?


「起こしてやるから少し寝ろ!」


頷いた朱希は、寝るまで側にいてくれる?


少し寝ろ、と言った英介の手を握り直して甘えた口調で訊くんだな。


「何もなければ俺も俊也も此処にいるから、安心しろ」


英介も、俺より朱希の扱いを知ってるんだろう、諭すように優しい口調で朱希を支えてベッドに横たわらせる。


朱希の穏やかな寝息が聴こえるまで、俺はパソコン画面を見ながら時折、ベッドの方を見ると、英介の手を握って瞳を閉じている朱希。

朱希のお腹を優しくポンポンっとしている英介の姿に、勝手に溜め息が溢れていた。


本当に朱希は、英介を好きなんだな。

そうやって英介には甘えるんだな。

俺には、何でも相談できる親友みたいな甘え方。

だけど、今もこれから先もそれでいい。

朱希の笑顔が見れるなら。

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