ふたつの愛し方
「ちょっとっ!貴女、出戻りの手術室看護師よね?!」


救命に戻る途中で、病棟看護師さんに捕まった。

私を知らないって事はボストンに行ってから、入って来た看護師さんだろう。

「はい、そうですけど」


「貴女ねっ!高橋先生とどういう関係?それに北河先生とも。この前、北河先生と一緒に同じマンションから出て来るのも見たんだけど?手を繋いでね!」


あぁ………面倒。

看護師の世界も所詮は、男性が増えたとは
言っても、この病院は女性ばかりで女社会。

こういう事もあるんだよね。


「2人は幼なじみですよ。北河先生とは同じマンションに住んでいるだけで、手を繋ぐのも小学生の時から当たり前なんです」


「そうなの。だからってあんまり高橋先生と北河先生と病院内で、ベタベタするのは止めてもらえる?」


「そんなベタベタなんてしてませんけど。2人とは仲が良いだけです。とにかく幼なじみ以上ではないので、変な勘繰りは止めて下さいね」


英介とはそれ以上だけど、いちいち言うことでもないし。

言ってしまえば余計にややこしいだけ。


わかったわ、と睨みつけて踵を返された。


そこにーーー。

林主任から専用コールが鳴った直後に、救急車の音がする。


「わかりました!すぐに戻ります!」


無理するなって言われたけれど、急がなきゃ!


無理はしないでね、と林主任も西山さんも気にかけてくれる。

大丈夫です、と無理に笑顔で答える。

二人が居たら、絶対に怒られるよね。

ごめんね……勤務中だけは多少の無理は許して。


準備を終えて運ばれてきた急患は、交通事故による大腿骨骨折。


今日も英介の横に立つ。

大丈夫か?

大きく頷くと、いつものように名前を呟いてくれる。


英介の右手に手順を頭の中で整理しながら、器具を渡していく。


1時間半後に、無事終了。


ホッとして英介を見上げると、お疲れ、と微笑んでくれた。
< 32 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop