ふたつの愛し方
お腹が空いた、と言う英介と作り置きのご飯を食べ終えると、ごちそうさま。


「ゆっくり休めよ」


頭を撫でてくれた英介に、一緒に居て、と甘えていた。


英介の側で眠る温もりを知ってしまったら、英介の温もりがないと寝付きは悪いし……何度も目が覚めてしまう。


仕方ねぇな、と。


「シャワー浴びたら来るから、朱希もシャワー浴びて待ってろ」


もう一度、頭を撫でてくれるから頷くと、髪に唇が触れる。



シャワーを浴びて、髪を乾かしてルームウェアに着替えたタイミングで、
この前渡したスペアキーを使って来てくれて。


「もう腫れてないな。まだ痛むか?」


足首に触れる温かい手が心地好い。

痛くないよ、と答えると。

よかった、と安心したように微笑んで。


「念のため朝まで、貼っとけよ」


湿布を貼って、包帯で固定してから抱き上げて、ベッドまで運んでくれる。


英介も寝転んで、伸ばしてくれた腕に英介の方を向いて頭を乗せると、朱希。

ん?と顔を上げた私の唇に、唇が重なる。

何度も触れるだけのキスをして、微笑み合うと。


「あんまりキスすると……抱きたくなるから……今日はこれでおしまい」


「抱いてもいいよ?」


「今日は抱かねぇよ。まだ無理はさせられない……それに今日はアレがない」


必ず避妊してくれる英介だけど、アレを着けずに抱かれたら、もっと気持ちいいのかな?

避妊薬を服用してみようかな。


だからね。


「無理しなくても良くなったら……アレ着けないで抱いてよ?」


「……避妊薬を服用するなら……お望み通りに」


急にそんな我が儘を言ったにも関わらず……直ぐに避妊薬って言ったのは、私が何も考えなしで言うとは思わなかったんだと思う。


「うん……英介をもっと感じたい」


「そんなこと言われたら……壊してしまうかもしれない……いいのか?」


いいよ、と。

自分から唇を重ねて、すぐに離すと英介が唇を追いかけてきてくれる。


また何度か触れるだけのキスをして、おやすみ。


優しい英介の声が耳元を掠めて、胸に頬を擦り寄せると強く抱き締めてくれる。


ゆっくりと瞼を閉じると、額に落とされた英介の唇。

眠ってしまうまでに何度も何度も。


朱希、大好きだよ。

そんな言葉が聴こえた気がした。

英介が私を大好きなんて……夢だよね?



英介の腕の中で目が覚めると、いつもの癖で枕元に腕を伸ばすけれど……
スマホがないことに気付いて。

英介の腕の中をすり抜けてリビングへ行って、テーブルに置いたままのスマホを確認すると、深夜1時。

呼び出しがないことにホッとして、冷蔵庫の水を飲んで、また寝室で英介の隣に横になる。


眉目秀麗な顔は、寝顔さえも綺麗。

女がほっとかないはずで、看護師さんたちも騒ぐはずだ。


そっと頬に触れると、英介の瞼が勢いよく開いた。


「……起きたのか?」


「うん……まだ眠たい……」


「俺も……今……何時?」


「1時だよ。目指し合わせたから鳴るまで……また抱き締めてて」


英介の胸に顔を埋めると、柔らかく抱き締めてくれる。

そのまま、また眠りに落ちていた。
< 34 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop