ふたつの愛し方
「明日、俺が隣に居る。手が震えたら何度でも名前を呼んでやる」


昨日の夜、英介はベッドの中で言ってくれた。



手術前に、カンファレンス室に俊也に呼び出された。

きっと俊也も心配してくれてるんだね。


「俺は一緒には居てやれないけど、英介なら何があっても必ず助けてくれる。安心して英介のサポート出来るな?」


英介より背が高くて、180cm近くある俊也を見上げて。

出来る!ありがとう。


よしっ!看護師の瞳になってる、と頭を撫でてくれる。


「行って来い!そろそろ時間だ」


背中をポンっと叩いてくれた俊也に見送られて、手術室へ。


全身麻酔で眠る母。

予定通りの腹腔鏡下手術。

切ることもなく、身体から石が取り出される。

細かくて小さいものから、5cm位のものまで。


無事に終えると、英介はお疲れ、と微笑んでくれた。

私の母だろうと、いつもの手術後のルーティーンをして。

出ていく直前に、皆が居るにも関わらず、

頑張ったな、帰ったら甘やかしてやる。

耳元に唇を寄せて囁いた。


絶対にこんなの西山さんにからかわれる。

案の定、北河先生は朱希ちゃんに優しいんだから。

幼なじみ以上だったりしてね、ってからかわれたじゃない!

事実なんだけど…………

西山さんだからいいけど、病棟看護師さん達の前や佐々木さんが居たら、また面倒だよ。

一応は、お説教するからね。



5日後、母は無事に退院した。

病院の正面まで見送りに、俊也も英介も来てくれて。

近いうちに帰って来てね、と母に言われて。

父は、無理しないようにな、と言ったかと思うと、俊也と英介に、娘を頼んだ。

俺たちに任せて下さい、と俊也。

安心して下さい、と英介。


私は、二人に大切にされて。

家族にも愛されてるね。


「俊也、英介。ありがとう」


父と母が病院から出た後に、二人を見上げる。

二人とも笑顔で、頭を撫でてくれた。
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