ふたつの愛し方
《俊也》


朱希の誕生日の前日。


「たまには俺と近場で、デートしよう?明日は朱希の誕生日だろ?行きたいとこない?」


数日前に訊くと、ROUND1。

そう答えた朱希と、車で30分の距離のROUND1で童心に返ってはしゃぐ。



「勉強漬けだった大学の時、息抜きに3人で行ったよね。覚えてる?」


「覚えてるよ」


忘れるわけがない。

俺の青春時代のほぼ全て、朱希が居て。

英介が居た。

ひとつひとつは、俺の中に深く刻まれていて大切な思い出。


「確か、あの時も私の誕生日だった」


「そうだな。だから行きたくなった?」


「うん。俊也が行きたいとこある?って訊いてくれた時に、真っ先に浮かんだの」


「そうか。今度は、英介と3人で来ような?」


うん、と大きく頷く朱希の笑顔は、疲れていても、悲しい時も、俺に元気をくれる。

英介も惚れ込んでる笑顔。

半年後に許嫁が戻って来ると言っていたから、俺が守る。

また3人で笑い合えるように。

英介の腕の中に、また朱希が笑顔で戻れるように。



「朱希、誕生日おめでとう」


俺が悩んで送った、小さめの一粒ダイヤの目立ち過ぎない0.2ctのピアス。

仕事中は、透明のピアスを着けている朱希へ。


ありがとう、と。


「ずっと、これなら仕事中でも着けるね!」


「ああ……ずっと着けてて欲しくて、仕事中でも着けれるピアスを選んだ」


嬉しい、とまた満面の笑みをくれる。


いつでも輝いてる、自然な笑顔に出来るのは、俺と英介だけ。


英介が朱希に想いを伝えるまでは、俺が独占する。


俺はかけがえのない存在のお前から、朱希を奪いたくない。

英介は、中学の時の約束を幾度となく喧嘩をしても励まし合い、助け合い守ってくれた。

お前が居たから医者になれた。

母と同じ病も今は、治せるまでの技術を身に付けられた。

お前の知性と技術は天性のものだ。

それをサポート出来るのは俺しかいないだろ?

俺の医者として人生は、お前と共にあるんだから、院長なんかにならなくても俺はお前に着いて行く。

盟友として、一緒に医学の道を歩んで行こうな。


そして、俺の朱希への想いが一線を越える前に朱希を迎えに来いよ。

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