ふたつの愛し方
《華世》

私が医者の道へ進むのは必然だった。

大学病院で今は、理事長をしている父の影響。

今は、医者ではなく経営者だけれど優秀な外科医だった。

そんな父が、北河総合病院を将来的に買収するために、許嫁として会わせてくれた人が英介さん。


一目見た瞬間の、胸の高鳴りと高揚は今でも忘れない。

一瞬で私の心に火を灯した。

物語の世界から出てきたような綺麗な顔。

身長は特別高いわけではないけれど手足が長いから、高く見えて、スタイルもいい。

許嫁としては申し分ない。


医者になってからの彼は、ボストンに行き技術を磨いたと風の噂で聞いた。

アメリカで医師免許を取った私が、日本で医師免許を取るために一時帰国した際、彼は日本には居なかった。

会いたくて。

取得後に彼のいるボストンに行くと、 その傍らには、天真爛漫という言葉がピッタリ当てはまるような女性がいたけれど。

少しでも話をしたくて連絡を入れて、会うことは叶っても、彼は真っ直ぐ私を見てはくれなかった。


きっと彼の心は、彼女にある。

その時に誓ったのよ。

私は今よりもっと技術を磨いて、彼と医者として、伴侶として歩いて行くと。


それまで精々、彼女を愛してあげて。

私が必ず手に入れるわ。

医者として彼の腕も、心も身体も全て。


いよいよ、その時は半年後ね。

早く会いたいわ。
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