ふたつの愛し方
寒いっ!!

暑いくらいに暖房の利いた病院を出ると、12月に入った、真冬間近の冷たい空気が肌を差す。

思わず身体を縮めると、朱希!

振り返った先の大好きな声に、自然と笑顔になる。


「今日はもう帰れるの?」


「ああ……さすがに夜勤明けに日勤の終わり時間まで、働いたらしんどい」


「お疲れさま。英介の部屋の冷蔵庫に昨日、ご飯入れて置いたから一緒に食べてゆっくりしようね?」


「そうだな。ありがとう」


然り気無く英介は手を繋いでくれて、自分の方へ引き寄せてくれる。

触れた腕からも繋いだ手からも、英介の温もりが伝わってきて温かい。

顔が緩んでしまっている私に、良いことあった?


「あったよ。英介に触れてるから温かい」


「……そうか……よかったな」


いつもなら、もっと甘い言葉を嬉しい言葉をくれるのに……

ここ数ヵ月、英介はあまり言ってくれない。

何かを隠してる?

それとも………噂の人が現れた?

不安を消したくて、繋いだ手に力を込めると、指を絡めて握り直して、ダウンコートのポケットに入れてくれた。

やっぱり気のせい?

考えすぎ?



「着替えたら、英介の部屋に行くね」


「待ってるな」


エレベーターの中で別れた時も、いつもの英介で、今も一緒にご飯を食べてるけど何にも変わらない。
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