ふたつの愛し方
《美和》


「あっ……んっ……はぁ……ーアアっ!」


仕事を終えてから彼氏の部屋のベッドで戯れる。

付き合って3年だけれど、私の心は彼にはない。

いつか好きになる、愛せる日が来ると思っていた。

だけど、その日は今でも来ない。

所詮は………欲求を満たすだけの相手で、寂しさを埋め合わせる相手に過ぎなかった。

私の心は、高橋くんにあるから。


大学を卒業して薬剤師の資格を取ったにも関わらず、卒業した大学病院の研究室で働いていた私に、声を掛けてくれたのが高橋くん。


「北河総合病院の臨床検査士してくれないか?二人のうち、一人が辞めてしまうんだよ。普段は隣接する薬局で薬剤師として、働いてくれると助かる。こっちも人手不足らしいから」


ずっと研究室に居るのもと考えていた矢先で、すぐに返事をした。

働かせて、と。

この時から、高橋くんは朱希を好きだってわかっていたけれど……

何回も、ご飯を食べに行くうちに高橋くんを好きになっていた。


告白しても答えはわかってるから、同じ研究室で働いていた、男性と付き合うことにした。

ずっと好意を寄せてくれていたから。


今日の高橋くんは何処か寂しそうで………堪らずに遠回しの告白をしていて。

自信満々に、好きにさせるなんて言ったけど自信なんて微塵もないけれど。

いい答えしか受け付けたくない。

そのままを伝えると、触れたい衝動で抱き締めていて………


頭を撫でてくれたかと思うと、髪に柔らかい感触がして、キスされたのだとわかった。


真っ赤に染まっているだろう顔を見られたくなくて、

どんな表情でキスをしたのか見れなくて、肩口に頭を預けたまま、頭を撫でてくれる手の温かさを感じていた。



彼氏とも、そろそろ潮時だね。

どうやら結婚を考えられてる雰囲気だし。

プロポーズなんてされる前に、サヨナラするわ。
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