ふたつの愛し方
Episode:12
《俊也》


英介から突然、呼び出しがあった。

もうすぐ片付くってことだろう。

買収はきっと避けられない。

だったら、英介の出した結論はひとつしかない。


「俺が病院を出て開業したら、着いてきてくれるか?」


やっぱりな。

わざわざ答えなんて訊かなくてもわかってるくせに。


「着いてくに決まってるだろ。朱希も近藤も一緒にならな」


「もちろんだ。親父に院長にはならないし、華世とは結婚しないって伝える前に準備をしてる。終わるまで、あと少しだ」


「わかったよ。俺に出来ることは?」


引き続き朱希を守ってくれ、と。

華世を捨てたら、朱希が何をされるかわからない。


全てを丸く治めるために、橋本先生に気のある振りをしたってことか。

本気にさせて捨てるって……最低なやり方だが、英介ならやりかねない。

自分の信念と何かを守るためなら、冷酷にも残酷にもなれる。

俺には出来ないよ。


「守るけど……きちんと話をしてから捨てろよ?」


「わかってる。朱希だけは傷つけない」


俺は影で二人を見守るため、助けるため。

英介は、朱希を愛するために。

この世に生を受けたんだろうな。

だったら一生、俺は二人を一番近くで見守ってやるよ。


そして…ーー、


「お前が朱希を迎えに来たら、俺は近藤の気持ちに応えるよ」


こんな俺を好きだと言ってくれたから。

幼なじみの親友に、ずっと想い続けていた女を託して、俺はその女の親友を大切に守るよ。


「そうか。近藤は強がりだからな。俊也の優しさなら受け止めてやれるよ」


「俺の優しさならか……よくわからないけど……とりあえず他に出来ることがあるなら言えよ?」


ああ、と頷いた英介。


今は、いつでも病院から離れられるように準備しておくかな。

放ってはいけない患者さんもいるから。


俺は何があろうと、俺の医者として生きる道は3人と一緒だ。
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