ふたつの愛し方
《美和》


「あともう少しで解決させるからって……英介に聴いた」


朱希が避妊薬の処方箋を持って来た時に、そう言って嬉しそうに笑う。


よかったじゃない、と背中をポンポンすれば表情は前よりも桁違いに明るくて、ホッとする。

北河くんとも気持ちを確かめ合ったのかもしれない。

この表情からは、そうとしか考えられない。


「私も、北河くんの決断次第では着いてくから朱希とは、ずっと一緒だよ!」


「ほんとに!?美和も一緒なら嬉しいし、心強いよ」


北河くんには、もう話したと伝えると、英介も心強いよね。


そうよ、まさにそう言ってくれた。

どう言うかとか、わかるのに何で態度だけでわからなかったかな……

明白だったじゃない。


それよりも朱希には伝えとかなきゃね。

大事なこと。


「北河くんが朱希を迎えに来たら、私が高橋くんをもらうからね!もう気持ちは伝えた」


「俊也は、なんて言ってた?」


「考えておくって言ってくれた」


「それなら、ちゃんと考えてるだろうし。美和なら俊也を任せられる。よろしくね」


俊也はね……、と。

無理をしすぎるから、その時は叱ってね。

しつこいくらい言えば効いてくれるから。


うん、任せて!

力強く頷いた私に、満面の笑みをくれる。



「そういえば、この前ね。橋本先生を見たわよ」


自分に凄く自信があるのか、プライドにの高そうな女だった。

裏切られ、恨まれたら何をするかわからない人だね。

朱希が心配だわ。

北河くんと高橋くんが居れば、大丈夫だろうけどね。


「何も言われなかった?」


「薬剤師がどうして居るの?って言われちゃったから、臨床検査士もしてるって答えたんだけど……もうすぐで、ただの薬剤師に戻るわって言われた」


「なにそれ……酷い……薬剤師をバカにしてるよね。看護師さん達にも上から目線なの……」


「そういう女なんだよ。それを北河くんは気付いているのかわからないけれど……ボロは出るんじゃない、もうすぐね」


そうだね、と頷いた朱希は、負けず嫌いが出たみたいな表情で、少し心配。

首を突っ込んで痛い目に合わないでよ、と。

北河くんに心配を掛けさせないようにね、と忠告しておく。


「わかってるけど、何か言われたらわからない」


はいはい。

それが朱希よね。

だからね、何かあれば私にも高橋くんにも言いなさいよ。


はいっ……と頷いた朱希の頭を撫でてあげる。


朱希は、私の大切な親友。

この天真爛漫な子の心を傷つける人を、私は許さない。

朱希に危害が及ばないよう、私があの女に牙を向けなくてもいいよう、早く解決してよね。

北河くん。
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