ふたつの愛し方
《英介》
翌日、俺は案の定、親父と理事長に呼び出された。
開口一番に、結婚しないとはどういう事だ!
親父の罵声が飛んでくる。
「言葉のまんまだよ!不正にまみれの大学病院なんかに買収されて、好きでもねぇ女と結婚させられるなんて真っ平ごめんだよ!」
座ったまま告げると、親父と理事長の瞳が見開かれた。
俺が知っているとは思わなかったんだろう。
「知っているようだね。証拠はあるのか?」
「ありますよ。娘さんから訊いた、録音済みの証拠がしっかりとね。既に警察には提出済みですから、近いうちに調査が入りますよ」
理事長は項垂れて、親父は愕然としている。
「理事長、早く戻られた方がいいですよ。無駄だと思いますが、証拠隠滅くらいされたらどうです?」
軽く舌打ちをした理事長は、慌てて飛び出して行った。
親父の話では、うちは賄賂を貰っていない。
脱税も知らなかった、という。
だけど、早かれ遅かれ調査は入る。
「これから、英介はどうするんだ?」
「俺は……親父が不正に荷担していたなら開業しようと思っていた。荷担していないのであれば病院に残る。ただし条件がある」
その条件とは………
親父が院長を退くこと。
だが、俺が院長になっても、経営者って柄じゃないから経営面は、俊也に副院長に任命して任せたいこと。
俺は、第一線から退く気はないこと。
今、病院で働いてくれているスタッフ全員を、そのまま残すこと。
「わかった。英介に従おう!」
「ありがとう、親父。とりあえずは、大学病院との買収に関する書類を、全て出しといてくれ」
わかった、と言った親父を信じて、院長室を出ると、扉を背に崩れるように項垂れていた。
あと少しで終わる。
全て片付けば、やっと朱希を迎えに行ける。
俊也と共に、病院を更に守り立てていける。
近藤が、臨床検査士を続けたいという望みも、叶えてやれる。
たかが、数ヶ月………長かった。
今は、ただ一日でも早く…ー…朱希を抱き締めて。
朱希の温もりを感じて眠りたい。
翌日、俺は案の定、親父と理事長に呼び出された。
開口一番に、結婚しないとはどういう事だ!
親父の罵声が飛んでくる。
「言葉のまんまだよ!不正にまみれの大学病院なんかに買収されて、好きでもねぇ女と結婚させられるなんて真っ平ごめんだよ!」
座ったまま告げると、親父と理事長の瞳が見開かれた。
俺が知っているとは思わなかったんだろう。
「知っているようだね。証拠はあるのか?」
「ありますよ。娘さんから訊いた、録音済みの証拠がしっかりとね。既に警察には提出済みですから、近いうちに調査が入りますよ」
理事長は項垂れて、親父は愕然としている。
「理事長、早く戻られた方がいいですよ。無駄だと思いますが、証拠隠滅くらいされたらどうです?」
軽く舌打ちをした理事長は、慌てて飛び出して行った。
親父の話では、うちは賄賂を貰っていない。
脱税も知らなかった、という。
だけど、早かれ遅かれ調査は入る。
「これから、英介はどうするんだ?」
「俺は……親父が不正に荷担していたなら開業しようと思っていた。荷担していないのであれば病院に残る。ただし条件がある」
その条件とは………
親父が院長を退くこと。
だが、俺が院長になっても、経営者って柄じゃないから経営面は、俊也に副院長に任命して任せたいこと。
俺は、第一線から退く気はないこと。
今、病院で働いてくれているスタッフ全員を、そのまま残すこと。
「わかった。英介に従おう!」
「ありがとう、親父。とりあえずは、大学病院との買収に関する書類を、全て出しといてくれ」
わかった、と言った親父を信じて、院長室を出ると、扉を背に崩れるように項垂れていた。
あと少しで終わる。
全て片付けば、やっと朱希を迎えに行ける。
俊也と共に、病院を更に守り立てていける。
近藤が、臨床検査士を続けたいという望みも、叶えてやれる。
たかが、数ヶ月………長かった。
今は、ただ一日でも早く…ー…朱希を抱き締めて。
朱希の温もりを感じて眠りたい。