ふたつの愛し方
証拠を持っていた医者は、アレクだった。

私たちが働いていたボストンの病院に来る前は、橋本先生が居たニューヨークの病院に居て。

アレクが記していた物は、証拠隠滅されずにアレクの手元に運良く残っていた。

橋本先生が、私に危害を与えた場合のために、アレクに調査を頼んでいた。

そして、浮かび上がった許されない事実。

私にさえ、危害を与えなければ黙っておくつもりだったらしいのに……英介の逆鱗に触れるからだ。

英介を甘く見ていたからだ。

後に詳しい調査の結果、橋本先生は両国での医師免許を剥奪された。


きっと、何の不自由もなく育って来て。

欲しいものは全て手にしてきたお嬢様なんだろう。

私利私欲にまみれて、自分で自分を苦しめて、全てを失くす。

誰にでも有り得ることだけど、私はそんな人間にはなりたくない。


時に我慢して、時に自分に出来ることをして守りたい。


今回の件で見たくないものを見た。

汚い人間の欲と、久しく触れてなかった愛おしい人の残酷な姿。


もちろん、見れてよかったものもある。

一人で全てを背負い込んで、大切なものを守ってくれた愛おしい人の強さ。

辛いときにも、元気と笑顔をくれる友の愛情。


避けては通れなかった道なのかもしれない。

この全てを私が見るために。
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