ふたつの愛し方
《俊也》


心をちゃんと伴う人としたことがない。

美和が言っていた言葉に俺の心を抉った。

俺も、よくよく考えれば同じかもしれない。

彼女と呼べる女は何人か居たけれど、本当に好きか、と言われれば何かが違う。

高校の時はまだガキで、ただ快楽を覚えて、その快楽を味わえれば良かった。

大学の時は……既に朱希を女として好きで、義務行為のように情を交わした。

寄ってくる好みの女と一夜限りなんてこともなかった訳じゃない。


だけど、美和は違った。

美和の身体の全てが、俺の理想とする柔らかさと心地好さ。

今まで抱いてきた、どの女よりも良かった。

この理想とするものを手にしたら、美和以外は無理だと、自分が苦しい程に自覚しているのに………

美和を壊してしまいたいくらい、触れていたいのに………躊躇う自分がいる。


俊也くんは私を見てくれない。

身代わりじゃない。

朱希への気持ちを隠すようになってから、2年前の彼女以外にも散々言われてきたこと。


美和は俺の気持ちを知った上で、真っ向からぶつかって来る。

抱いてる時も何回も、好きだよ、と口にするから、名前を呼べば甘く啼く。

そんな美和の気持ちに応えてやりたいのに……心の底からの気持ちに達するまではと応えてやれない。


その真っ直ぐな心で、もっと俺にぶつかってきてくれよ。

嫌になるくらい大好きって言ってくれよ。

気が狂うくらい美和にだけ、溺れさせて。

心も身体もぐずぐずに溶かしてくれよ。
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