ふたつの愛し方
「美和……昼飯がてら出掛けるか?」


「行く!ショッピング付き合ってよ!」


クールに振る舞ってると思えば、無邪気な笑顔を見せたり。

でも、これが素の美和なんだろうな。


「よしっ!シャワー浴びて行くぞ。その代わり、遠くは行けないからな?」


わかってるよ、と勢い良くベッドから飛び降りて、借りるね、とタオルを巻いてバスルームに向かう。

その背中に、可愛い、と呟いていた。


ーーーーー。

昼飯をテラス席のあるカフェで食べてから、近くのショッピングモールに足を延ばした。


これ可愛いよね?

フードにレースの付いたパーカーを指差した美和の好みが以外だった。

仕事の時も、普段の服装も、可愛いより綺麗な感じが多いから。

てっきり、その横のシンプルな薄いグレーのロングカーディガンが、好みだろうと思った。


「羽織ってみたら?」


鞄を美和から預かって、羽織らせてあげると、顔が綻んだのはよく似合ってるからだ。

どう?と、鏡越しに見上げられてドクッと心臓が音を立てた。


「似合ってる。プレゼントするよ。貸して」


いいの?と言う美和のパーカーを脱がせて、いいよ、と。


「他も見ようよ。美和が欲しい服、全部買ってやる」


「ありがとう。お言葉に甘えたついでに、一緒に選んで欲しいな」


仕方ねぇな、と答えながらも。

彼女と服なんか、況してや女性の服なん選んだ事のない俺は、新鮮さを感じていて。

美和が、これは?と。

俺も、こんなのどう?と一緒に選ぶ事が楽しくなっていた。



数枚の服を買い、店を出ると。

どちらからでもなく指を絡ませて繋いでいた。

今日だけは、呼び出しが掛からないでほしい、と願う自分がいた。




「本当はね、今日買ってくれた服が好みなんだけど……歴代の彼氏が綺麗めな服が好きで合わせてたの。好みの服は箪笥の肥やしになってる」


帰りの車の中で突然、そんな事を言うから、以外だと思っていただけに妙に納得できた。


「今日、買った服の方が似合ってるよ。箪笥の肥やし以外の服は、全部捨てろ」


「え……っ?それって嫉妬?」


自分で口にして驚いていただけに、図星を突かれて、こういうのが嫉妬なんだと改めて理解した。

朱希が俺以外の誰かと、英介とは嫉妬したことは数知れずあるけれど、朱希以外の女が俺以外の男の話をしても、嫉妬したことなんてなかった。


たぶんな、と答えれば。

嬉しい、と言って微笑んで、横を向いた美和にキスをしていた。

信号待ちの交差点で。


「不意打ちはやめてよ!」


顔を紅くして笑う美和も、可愛いと思っているんだから………

少しずつ、美和に心を満たされてるんだろうな。


「一回、美和の部屋に帰るか?服もいるだろ?」


「うん……今日もまだ一緒に居てくれるの?」


「そう思ったんだけど……美和は?」


一緒に居たいよ、とまた無邪気に笑う。



もっと色んな美和を知りたいんだ。

医者である以上、緊急呼び出しもあって、休みは休みじゃなくなる日もある。

そんな限られた時間の中で。
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