ふたつの愛し方
『英介から今日は帰れって言われた。ちゃんと話そう。仕事終わったら俺の部屋に来て欲しい。待ってる』


仕事を終えてからLINE確認して、今は俊也の部屋のソファーに、向かい合って座っている。


「ごめんな、寂しかった?」


「うん…寂しかった……もっと構って欲しい……もっと触れたい……」


寂しかった?って、優しい声で訊かれて堰を切って溢れる。

他には?と頭を撫でながら言ってくれるから……ー、

抱き締めてキスをして欲しい、抱いて欲しい。

伝えたくても伝えられなかった気持ちを、伝えてしまえばスッキリして、身体の力がフワッと抜けるんだね。

だったら、一番聴きたい言葉も訊いていいかな。

安心させて。


「私のこと……好き?」


瞳を逸らされて、数秒の沈黙。

いったい何秒?

私には、とっても長く感じるよ。

ジッと逸らされた瞳を見つめていると、揺れることなく瞳を合わせてくれて。


好きだよ。


今は私だけの優しい甘い声で、じわっと溢れた涙。


「もう美和だけを好きになってるから、今からまだまだ好きになるよ」


涙を温かい指先が、優しく優しく拭ってくれて、腕の中に閉じ込められたら……

これほどに安心して、幸せな言葉をくれるなら、もっと早く伝えればよかった。

俊也の器量の大きさが、素直になっていいんだって教えてくれた。


「どうしても俺は仕事を優先してしまうから、すれ違いも多くなると思うけど……帰って来て美和が居るなら、病院に泊まらずに帰って来る。一緒に居る時間を少しでも作れる」


腕の力を緩めて、鼻先がぶつかる距離で……見つめられたかと思うと、、

美和のタイミングで此処に引っ越しておいで。


これはもうっ!!

大きく頷いてしまう、涙腺崩壊する言葉じゃない!

あぁ~あ……崩壊したっ!!


そんなに嬉しかった?と、また涙を拭ってくれて、大きく頷いたせいで涙がパタパタと散っていく。


「……美和……これからは寂しいなら、寂しいって言って。我慢しなくてもいい。不安なことも辛いことも全て話して欲しい。美和の気持ちを、丸ごと受け止めるから」


「……うんうん……話す。もうっ……本当に本当に大好き!」


首に腕を回し直して、抱き付いた勢いでソファーに押し倒してしまって、ごめん、と呟いていたけれど。

俊也は笑ってくれて、大好きって知ってる。
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