ふたつの愛し方
「英介?朱希?悪いな。一人は恐らく胸を強打してる。胸部大動脈破裂の可能性がある。今、超音波とX線をしてもらってるから直ぐにオペの準備を」


俊也の指示で、それぞれに着替えて私は手術室へ。

英介はカンファレンス室へ。


手術室では、バタバタと準備が進んでいて。


「主任!?やはり胸部大動脈破裂ですか?」


「恐らく。高橋先生の見解に間違いはない!だから、輸血用の血液と開胸セットの用意も忘れずに、お願いします!」


そこへーーー連絡が入る。

見解通りの胸部大動脈破裂。

しかし……血液型がO型RHマイナスという特殊な型。


「在庫が2つしかない。どうしたらいい?」


すぐにカンファレンス室に駆け込み、英介の指示を仰ぐ。

考え込んだ英介は、本当なら朱希の血液を誰だろうと一滴もやりたくない、と。


「だが……仕方ない。すぐに血液を取ってもらってくれ」


「うん、わかったよ」


そう、私の血液型はO型RHマイナス。


カンファレンス室へ、少しだけ手の空いた俊也が駆け込んで来て。

俺が血液を取るよ、と。

英介も、俊也なら、と俊也に任せてくれて手術室へ。


俊也が用意してくれた血液採取の針が、腕を刺す。

痛くないか?と、腕を擦りながら言ってくれる。

大丈夫、と答えると。


「よく英介は決断したな。独占欲の塊の男なくせに」


「たしかに……でも、本来なら一滴もやりたくないって言ってた」


「そうか。それなら、最小限に出血量を抑えてくれるだろう。在庫も含めて、必要とされる最低限の量だしな」


うん、英介なら大丈夫。

わかってるよ。

だけどね、隣に立てないのはやっぱり仕方ないとは言っても、寂しい。

貧血持ちだから、俊也ならダメっていうんだろうな。

それでも………

終わったら器械出し変わっていい?


「無理するなって言うべきなんだろうけど。英介にも怒られるだろうけど。俺が上から見てるから、終わったら変わっていいよ」


「ありがとう、俊也。」


「こういう時の朱希の我が儘は今に始まったことじゃない。本当に頑なに折れないからな……少しでも症状出たら、佐々木さんと変われよ?いいな?」


うん、と大きく頷くと、満足気に頭を撫でてくれる。
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