ふたつの愛し方
お疲れさま、と見上げると。


「俺のオペが終わってから上から見てたよ。英介のスピードに劣ってなかった。腕上げたな」


そう?ありがとう、と微笑むと、微笑み返してくれた俊也は、

朱希、と柔らかい声で囁くように、見上げたままの私の瞳を見つめる。


「……英介を好きなのか?」


突然の今まで一度だって訊いてこなかった俊也の問いに、瞳を逸らしていた。

なんで?

下を向いたまま訊き返すと、帰って来てからの朱希を見てたら、と。


「英介を見る瞳が……女の瞳になってるような気がしたから」


帰って来るまで俊也は、やっぱり気付いていなかったんだ。

だけど、ボストンで英介と一線を越えたから……

自分では気付かない瞳で英介を見るようになってたんだね。


「……好きだよ……ずっと、中学生の時から」


素直に答えると、そうか。

だけど……高校ん時も大学ん時も彼氏いたんだろ?

それは………それはね。

言葉に詰まる私から、俊也は瞳を逸らさない。

俊也の視線を感じる。


「英介も彼女がいたから……寂しくて……何度も告白しようとしたけど……出来なかった……俊也と3人で過ごす時間も好きだったし……そんな時間が崩れるのも……嫌だった……」

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