ふたつの愛し方
Episode:15
「英介にね……相談したいことあるんだけど……」


お風呂上がりに、上半身だけ裸でバスタオルで髪を拭きながら、ソファーに座っている英介の隣に座って話し掛けてみる。


「相談なんて……改まって、何かあったのか?」


「最近ね、生理でもないのに不正出血があって……検査した方がいいよね?」


一瞬だけーー…英介の瞳が揺れて、私の手を握り、当たり前だろ、と。

明日、夜勤前に超音波検査して来い。


わかった、と言うと。


「もしもの時は俺が治してやるから」


掻き抱くように抱き締めてくれて、スーッと音を立てて不安が消えていく。

でもね……

最悪の場合はね………訊いてもいいよね?


「英介は……子供欲しい?」


「欲しいな。朱希との子供なら尚更な」


そうだよね。

私も欲しいよ。

だけど……子宮が失くなったら……英介はどうする?

お願い、それでも私がいいって言って。

そんな願いを込めて……


「子宮の病気だったら?」


「朱希が望むなら、取らなければいけない状態なら俺が取る」


「子供できないんだよ?それでも?」


子供が出来なくなっても朱希が居ればいいんだよ、と。

その時は2人で死ぬまで歩いて行けばいいだろ?、と。



英介の腕の中で、涙が溢れていた。

いつぶり?

英介の前で、涙が溢れたのは。


ふわっと腕を緩めて、朱希、と言われて涙をそのままに見つめると、とても優しい瞳に捕らわれる。

指先が涙を掬い上げてくれて、何にも心配するな。


「俺が治してやるって言っただろ?もう一回、言うから良く聴いて。俺は朱希が傍に居ればいい。わかった?」


「うん……ありがとう」


次の日、超音波検査をした結果ーー。

卵巣腫瘍だった。

その流れで、MRI検査とCT検査をしてもらうと、腫瘍は5㎝。

まだ切る大きさではないけれど……腫瘍マーカーをして悪性か良性か……

美和には話していて、既にお願いしていた結果を聞きに行くと、、、


「良性よ。よかったわね。北河くんには話したの?」


「うん。昨日、話したら今日の出勤前に検査して来いって言われてして来たよ。卵巣腫瘍で、その大きさは5㎝だから切るか悩むんだよね……」


「そっか……切るかは北河くんの判断次第ね。産婦人科が望ましいんだろうけど……北河くんがやるって言いそう」


言うだろうね、間違いなく。

とりあえずは、英介に話して来ると美和と別れて、院長室に向かった。
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