ふたつの愛し方
Episode:16
「来週、4日間だけ院長の権限を使わせてもらう。頼んだぞ、俊也」


英介と私が夜勤の日。

俊也と美和が休みの日。

俊也の部屋に引っ越してきた美和と4人で、昼ご飯を食べて居る時に英介が切り出した。


「はぁ……相変わらず勝手だな。しかも来週って急なんだよ」


「どこかに二人で行くの?」


俊也の軽い文句と美和の問いかけに、近場に泊まりで旅行くらいいいだろ、と。

何かあれば飛んで帰って来れる距離だ。


たしかに、飛んで帰って来れるけど。


「俊也、お願い。ディズニーシーに1泊で行って。残りの2日間はゆっくりするだけ」


「わかったよ。楽しんで来い。その代わり……再来週は副院長の権限で休みをもらう!医者のシフトを組んで、人員を確保してるのは俺だからいいよな?」


「構わないよ。ありがとな。近藤と旅行に行って来い。ただし、近場限定だ」


わかってる、と言った俊也を美和が嬉しそうに見ていて。

どこに行く?と俊也の腕に、自分の腕を絡めている。

俊也も、そうだな……と美和の頭を優しく撫でてるから、幸せそうでよかった。


英介に、こっそりと。

幸せそうだね、と耳打ちすると、よかった、と凄く穏やかな瞳で二人を見つめていた。



「八景島は?」


ふいに私が呟くと、行きたい!と美和は俊也を上目遣いに見て微笑む。

美和が誰かにこんなに、安心しきった可愛い表情で、甘える姿ははじめて見た。

これは、俊也の器量と真っ直ぐな優しさのおかげだよね。


「いいな。行くか!」


俊也だって、満更でもなさそうに愛おしく見つめて微笑むんだから。

いいよね?英介。


私たちより、直ぐにでも帰って来れる距離じゃないから。


「もちろん、いいよ」


ありがとう、北河くん!

悪いな、俊也。朱希。


こうして、再来週は俊也と美和が。

来週は英介と私が、4日間の休みを満喫するはずだった。

ディズニーリゾートの待望のホテルも、予約が取れて。
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