ふたつの愛し方
電車事故で、受け入れ患者多数。
重症から軽傷まで。
「行くぞ!」
「うん!行こっ!」
エレベーターの中で数秒のキスを交わして、手を繋いで病院へ。
裏口から入って、救命を覗くと着替える暇なんてないとばかりに、人が犇めき合っている。
「コートと鞄だけ置いて来るか。医局の方が近い。朱希も」
大きく頷いて、医局まで非常用階段で駆け上がって、コートと鞄を置いて救命へ急ぐ。
「おいっ!俊也!?状況を説明しろ!」
通常勤務の医者、救命の医者、看護師さん、助っ人に来た病棟看護師さん数名の中で、処置をしながら的確に指示を出している俊也に、英介が声を掛けた。
「重傷者は、今はここにいる5名。今から俺は重症者の緊急オペに入る。軽傷者は救命のロビーで、研修医と看護師に処置をさせてる。英介と朱希は、重傷者の処置を此処で頼む。あとの指示は頼んだぞ!」
「わかった。朱希!」
はい!と返事をして、ガウンとマスクを英介と着け合い、手袋をして処置に当たる。
どんどん英介の手袋は真っ赤に染まり、止血ガーゼを腹部に当て、止血している私の手も真っ赤に染まっていく。
「血管縫合、完了。朱希、血も止まった」
大きく頷いて、鉗子に針と糸を挟んで準備していた物を渡すと、満足気に受け取ってくれる。
腹部縫合を終えると、重傷者の人が突如ーー…血を吐いた。
五十嵐先生が処置をしていた患者さん。
「五十嵐!そこ変われ!」
英介に指示をされて、五十嵐先生は患者さんを挟んだ反対側へ回り込んで、私は英介の横に立つ。
腹部に大きな内出血痕。
既に、意識は朦朧としていて意識レベルも低い。
軽く英介は、腹部を抑えて。
五十嵐先生のサポートをしていた看護師さんに、エコーと指示をする。
エコーを当てると………内臓破裂。
「手術室に運んでたら間に合わない!ここで切る!」
五十嵐先生も驚く中、英介の指示が飛ぶ。
点滴が次々と繋がれて、麻酔が利き始めて、朱希、と英介に呟かれて、差し出された右手にメスを渡す。
救命の限られたスペースで、限られた器具で内臓破裂のオペをするなんて…ーニューヨークに居たとき以来だと、器具を渡しながら冷静に思っている自分が居た。
それを驚きつつ、救命の看護師さんに見つめられる視線も感じていた。
他の医者や看護師さんの声もしっかりと耳に届いていて。
ニューヨークで数え切れないくらい体験して、身につけた視覚、聴覚が呼び覚まされていて、オペ看として血が何時になく騒いでいた。
重症から軽傷まで。
「行くぞ!」
「うん!行こっ!」
エレベーターの中で数秒のキスを交わして、手を繋いで病院へ。
裏口から入って、救命を覗くと着替える暇なんてないとばかりに、人が犇めき合っている。
「コートと鞄だけ置いて来るか。医局の方が近い。朱希も」
大きく頷いて、医局まで非常用階段で駆け上がって、コートと鞄を置いて救命へ急ぐ。
「おいっ!俊也!?状況を説明しろ!」
通常勤務の医者、救命の医者、看護師さん、助っ人に来た病棟看護師さん数名の中で、処置をしながら的確に指示を出している俊也に、英介が声を掛けた。
「重傷者は、今はここにいる5名。今から俺は重症者の緊急オペに入る。軽傷者は救命のロビーで、研修医と看護師に処置をさせてる。英介と朱希は、重傷者の処置を此処で頼む。あとの指示は頼んだぞ!」
「わかった。朱希!」
はい!と返事をして、ガウンとマスクを英介と着け合い、手袋をして処置に当たる。
どんどん英介の手袋は真っ赤に染まり、止血ガーゼを腹部に当て、止血している私の手も真っ赤に染まっていく。
「血管縫合、完了。朱希、血も止まった」
大きく頷いて、鉗子に針と糸を挟んで準備していた物を渡すと、満足気に受け取ってくれる。
腹部縫合を終えると、重傷者の人が突如ーー…血を吐いた。
五十嵐先生が処置をしていた患者さん。
「五十嵐!そこ変われ!」
英介に指示をされて、五十嵐先生は患者さんを挟んだ反対側へ回り込んで、私は英介の横に立つ。
腹部に大きな内出血痕。
既に、意識は朦朧としていて意識レベルも低い。
軽く英介は、腹部を抑えて。
五十嵐先生のサポートをしていた看護師さんに、エコーと指示をする。
エコーを当てると………内臓破裂。
「手術室に運んでたら間に合わない!ここで切る!」
五十嵐先生も驚く中、英介の指示が飛ぶ。
点滴が次々と繋がれて、麻酔が利き始めて、朱希、と英介に呟かれて、差し出された右手にメスを渡す。
救命の限られたスペースで、限られた器具で内臓破裂のオペをするなんて…ーニューヨークに居たとき以来だと、器具を渡しながら冷静に思っている自分が居た。
それを驚きつつ、救命の看護師さんに見つめられる視線も感じていた。
他の医者や看護師さんの声もしっかりと耳に届いていて。
ニューヨークで数え切れないくらい体験して、身につけた視覚、聴覚が呼び覚まされていて、オペ看として血が何時になく騒いでいた。