燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 私が先生を見ると、先生は口元を右手で覆った。
 前から思ってたけど、それ、なに?

 そう思った瞬間、

「……やばいな」
と先生がつぶやく。

「へ……?」
「旅行まで我慢できないかも」

 そう言われた瞬間、唇がふさがれた。
 それに応えると、先生はそのまま唇を耳元へ落とす。

 ちゅ、と音が聞こえて、その音に、体温に、ぎゅうと目を瞑った。

(ってここ、まだ玄関――――!)

 そういう問題でもないのだが、出勤の時もあれだけくっついていたのだ。
 帰ってきて早々、こんなところでこんなことしているのもどうなのだろう……。

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