燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 先生の唇が耳たぶを這う。

「だ、だ、だ、だめ!」
「うん」

 先生は言うけど、やっぱりやめてくれない。


(そもそも来月の旅行って約束だよね⁉ そう思ってたから、やっぱり今は覚悟はできてないですーーーー!)


 先生の胸を押す。先生はそんな手も軽々掴んで、また手にキスを落とす。

「あんまりかわいいこと言わないで。理性を抑えるのが大変だから」
「抑えてください! 来月まで!」
「……そうだよね……。できるだけ見ないようにしないとだめだな」

 先生が悲しそうに言って、私から目をそらす。
 そんな小さな仕草にいちいち胸が痛んで、私はほとんど無意識に目の前の先生の顔を両手で挟むと、自分の方を無理やり向かせた。


「それはそれで、いや!」


 見てほしい。
 先生に今の私のこと、見ててほしい。


―――これはやっぱりワガママ?

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