燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
車の助手席の窓を開けると、すっかり涼しくなった風が髪を揺らす。久しぶりに車で遠出すること、それに先生と一緒だと言うことで、私はなにもかもが嬉しくてならなかった。
今日の夜のことを思えば多少緊張はするけど、それでも、『やっとそうなれる』って思いが強くなってきていて、少し楽しみな気持ちも孕んでいたのだ。
「先生。疲れたら運転変わりますよ?」
隣で運転している先生に言う。ハンドルを握る手を思わず見て、男らしい手だなぁなんて思って、パッと目をそらした。あ、今、変なこと考えてしまったかも……。
私が頬を押さえていると、くすくすと先生は笑い、
「つばめの運転、怖そうだから変わらなくていいよ」
「失礼な。ペーパードライバーだけど、割とうまいです!」
せっかくだから、先生にゆっくりしてほしいのに。そう思ってふくれる。
先生はそんな私を見てまた笑った。