燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
着いた旅館は、老舗の温泉旅館で、私はその建物の佇まいが静かで落ち着いていて、でも逞しくて、大好きだと思った。写真でも見ていたけど、実際に来てみると、想像以上にいい。
「ステキ!」
「うん」
案内された部屋は、部屋に露天風呂がついていて、広い和室と、隣には少し高さのある和室があり、そこには布団が並んで敷かれていた。
それをみていると、今日はここで……、と思って顔が熱くなる。
先生はどう思っているのだろう、と思って振り返ると、先生は並んでいる布団を見つめて、見たことのない、怖い顔をしていた。
その顔を見て、私は思わず言葉につまる。
なんだろう……一瞬すごく、背中が冷えた。
それになんだかそれを見ていてはいけない気がして、私はそこから目をそらした。