燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 そのとき、一度出ていた仲居さんが部屋に戻ってくる。

 たくさんの種類の浴衣を用意してくれていて、好きなのを選んでいいと言われたので、私は赤の牡丹の柄を選んだ。先生は紺の浴衣で、二人とも着替えると、一気に旅行感が高まる。

 私が嬉しくて思わず笑うと、先生は目だけで笑ってこちらを見ていた。

―――先生、どうしたの?

 いつもと違う先生の様子に、私は違和感を持っていた。もしかしたら、先生も緊張しているのかもしれない、と思ったりもした。

< 120 / 350 >

この作品をシェア

pagetop