燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 仲居さんが館内や温泉の案内を一通りしてくれて部屋から出て行ったあと、急に部屋が静まり返る。私の胸はやけにドキドキして、これはもしかして、そういうことを期待しているドキドキだろうかと思った。

「……つばめ?」

 先生の手が私の腕に触れる。
 いつも当たり前にされることなのに、なぜか私は驚いてその手を振り払ってしまった。

「あ……ご、ごめんなさい」
「どうしたの?」

 先生が言う。


 先生を見ると、先生の目は笑ってないのに、口元は笑ってる。
 どうしたの、と問う、その声も低くて、冷たくて……。

 その声を聞くと、急に頭が痛くなってきた。
 なにこれ。


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