燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 先生はすっと目を細めると、

「もしかして……何か思い出した?」

と言う。その冷たい目と声にやけに胸がざわつく。
 思わず身体を引くと、先生は私の頬を触る。いつものように。


 でも、その手がいつもと全く違って、やけに冷たくて。
 私は気が付くと、身体を震わせていた。


「つばめ」
「やっ」


 近づいてきた先生の胸を押す。
 先生はその手を掴むと、

「やっぱり何か思い出したんだね」

と言った。


「先生、どうして? これは本当の記憶なの? これ、冗談だよね」
「冗談なんかじゃない。なんで思い出しちゃったんだろうね」


 先生の真剣な目が私を捉える。
 聞いちゃいけない。そう思うのに、聞かずにはいられなかった。


「どういうこと?」

「僕は無理矢理つばめの最初を奪ったんだ」


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