燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 おかしい。絶対、何かがおかしい。
 そう思うのに、記憶は嘘をついてなくて、この部屋で泣いてる私と、それを見ている先生を映し出していた。

「……うそ」
「嘘じゃない」


 先生はきっぱりと言う。「つばめが他の人に笑いかけるたびに、話すたびに嫉妬してた。つばめは昔から少し人懐こすぎた。だから、つばめのこと、自分だけのものにしたくて。つばめが嫌だって言ったのに、そんなの全然聞かなかった」


 これまで先生は私に優しかった。
 絶対にそんなことしないって思う。

 でも……今の先生は怖くて。全然違う人みたい。
 どっちが本物の先生かわからない。


 私は小さく震える体を自分で抱きしめた。


「僕はつばめと、ここで初めて結ばれた。そのことつばめも、思い出してしまったんだろ?」


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