燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
先生の言ってることの内容は分かるし、普通ならショックな内容だろうけど……
その話よりも、私がショックだと思っていることがあることに気づいた。
―――先生が私に抱いている大きい感情が『後悔』ってことだ。
私は、なぜかそのことがやけにショックだったのだ。
「先生はそれをずっと悔やんでいたんですか? だから優しかったんですか? 負い目があったから?」
「違う」
きっぱりと否定する声に、私は安心する。先生は続けた。
「もちろん負い目もあったけど、それ以上に、つばめにうんと優しくして、つばめが僕なしでは生きていけないくらいにしたかった」
先生はまっすぐにこちらを向く。「僕はちょっとおかしいよね。つばめのこととなると、冷静な判断ができなくなるって一条にも怒られるんだ」