燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 次に目が覚めた時には、白い天井、心エコーの音。慣れたその空間に、病院だとすぐにわかった。

「つばめ!」

 目を開けた瞬間、突然、誰かにぎゅう、と抱きしめられて、それがブルーのスクラブを着た医師であることに気づく。

―――お父さん……?

 そう思いながら、抱きしめられた相手を見る。
 いや、お父さんじゃない。


「天馬、先生?」

 私は心底驚いた。きっと天馬先生の抱きしめる力が弱くて、身体を動かすことができたら飛び上がっていただろう。

「……つばめ」

(……なんで呼び捨て)

 呆然としていると、次に右から手を取られて、
「つばめちゃん、心配したんだから!」
と泣きそうな声が降ってくる。見上げてみると、一条先生がこちらを見ていた。

 私はその美しさに目を細める。相変わらず綺麗だ。
 そう思って、目覚めてすぐに一条先生と天馬先生の二人を見られたことに満足して、また目を閉じた。

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