燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

「それとさ」
「なんですか?」


(まさか、まだ何かあるんじゃないだろうな!)

 そう思った途端、


「つばめ、またずっと『先生』って言ってるよね」


と先生は言う。


「あ……」

 そんなこと、すっかり忘れてたわ! ってか、もう忘れておいてくれ!
 先生は焦る私の頬を撫でると、

「何回分のペナルティだろうね」
「それは……数えてないしわかんないですよね?」

 正直、昨日の夜、どれだけ呼んだか、覚えていないくらいだ。
 なのに先生は飄々と、


「大丈夫、ちゃんと数えてたし、もうペナルティつけたから」

と言った。

「え?」
「こうやって、僕のものってシルシつけてたの」


 先生の手が私の身体に落ちる。指をたどっていくと、赤いしるしがとんでもない数、身体中に散っていた。

 これは、もしかして……。
 キスマークってやつですか⁉


「……って、なんでこんなに!」
「だって何回も呼ぶんだもん」


 先生は意地悪く言う。

 そう、こういうとこだよ!
 先生のこういうとこ、狡い!


「それならそうと、教えてくださいよ、先生!」

「「あ」」

 二人の声が被った。

(って、私また、先生って言いましたねーーーー⁉)

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