燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 あたしは拓海をじっと見ると、

「今日テーブル見に行く約束でしょ。ずっと楽しみにしてたの! 約束破ったら許さないから」

とむくれる。

 だってうちのテーブルって、本当にかわいくないの。冷たいガラスのテーブル。拓海が適当に選んだんだって。
 こんなのきらい。変えたいって言ったら、別にいいよって拓海が言ったから。

 あたしね、色々調べたの。拓海が忙しいから時間はたっぷりあったわ。
 本とかカタログとか雑誌とか見て選んだの。緩いカーブを描く木のテーブルがいいなぁ。そこで拓海とご飯食べるんだ。だから、今日は絶対本物を見に行きたい。

 拓海が『一人で見に行っちゃいけないよ』って言ったから、あたしはその約束守って、拓海が見にいけるって日まで待ってたのよ? もう絶対我慢しないんだから。



 拓海は頷いて、でも、と、分かってないと思っているように付け加える。

「でもね、急患はいつ来るかわからないから急患って言うんだよ」
「……お父さんに言う。もっと先生増やせって」
「こらこら、職権乱用しない」

 拓海はあたしを見て苦笑した。

 あ、その笑い顔は本当は困ってるわけじゃないのね。
 あたしは拓海の笑い顔が好きすぎて、見すぎていたせいか、いつしかその顔で本音が分かるようになっていた。

< 142 / 350 >

この作品をシェア

pagetop