燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 あたしはその日、ベッドで目が覚めたら、拓海がベッドわきにいて驚いた。
 だってね、あたしの持ってる最後の記憶って、中学3年のなんの変哲もない一日なの。

 そもそもそれまでの記憶もかなり断片的。

 不思議と小さい時ほど鮮明で、高校に入った後の記憶は全くと言っていいほどなかった。
 つまり、あたしにしてみれば、次の日も学校だなぁなんて思って寝て、目が覚めたら、拓海の家で、ベッドの上だったわけ。

 そして起きた時、混乱するあたしに、拓海は言った。
 あたしはもう25歳で、つまり今はもう10年後の未来。

 そして、自分はあたしの婚約者だと。


「未来ってことは、あたしはタイムスリップしたの⁉ 夜、自分のベッドで寝ただけなのに?」

 ちょうど寝る前にそんな本を読んだ。タイムスリップ、いつの間にできるようになったんだろう。すごい! けど、なんで寝ている時? いや、でもタイムスリップなんてある⁉

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