燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「でもよかったわ。目が覚めて」
一条先生はまた嬉しそうに笑った。
私はそんなこともそうだが、一つの違和感に気づく。それは服装だ。
スクラブ、という医療関係者が着る服。その服が半袖なのだ。
季節はまだ3月の終わりのはずだ。特に一条先生は寒がりで、夏になるまでは半袖のスクラブの下に長袖を着ることも多いし、なんなら寒さ対策も兼ねて白衣を羽織っていることが多い。
「……先生、その服、どうして夏用? 寒くないんですか?」
「ん? もう7月入ったからほとんど半袖よ」
「……7月?」
私は何か聞き間違えたのかと復唱する。「今って、3月じゃないの? 私どれだけ寝てた?」
―――まさか、3か月も眠っていた⁉
そう思って焦ったのだが、一条先生はきょとんとした顔で、
「事故に遭ったのは今朝よ。奇跡的に大きなけがはなかったけど」
と言うのだった。
(どういうこと?)
そう思って首をかしげる。
それからなんだか一条先生が変な顔をして、神経内科や脳外の先生を連れてくると、私はそれからいろいろな検査をされた。