燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 あたしが言うと、拓海は驚いた顔をした後、顔をそらした。
 どうしたの? と思ってのぞき込むと、拓海は少し泣いていた。


「え? なんで泣くの? 年よりは涙もろいの?」
「年よりって……僕まだ33だよ」
「十分年じゃない」
「まぁ、中学までしか記憶ない子からすればそうか」


 拓海は泣きながら苦笑する。
 そうよ。笑っていてよ、拓海。

 あたしは拓海の涙を手で拭った。やけに感触がリアルで、あたしはそれにドキリとする。
 すると、拓海は笑って、


「はは……心配させてごめん。ただ、嬉しいなって思っただけから」

と言った。

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