燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
次の日の朝、拓海はいつも通りあたしにカフェオレを入れてくれる。
最初ほろ苦いカフェオレを作るもんだから、砂糖3つ増やしてと言ったら笑ってた。
テーブルでカフェオレを受け取り、拓海はコーヒーを持ってあたしの前に座る。
「ねぇ、この夢、いつ覚めるのかなぁ?」
「……あのね、つばめ。よく聞いてほしいんだけど……」
その日、拓海が話しくてくれたのは、これが『夢ではない』ってこと。
驚いたけど、あたしはなんとなくわかってきていた。
「じゃあ、本当にタイムスリップしたの?」
「つばめにしてみたらそう感じるだろうけど……実際は、つばめは最後に覚えている日から今日まで『記憶喪失』ってことだと思う」
「記憶喪失?」
「うん」
「やだー! うそばっか!」
あたしが茶化すように笑っても、拓海は
「嘘じゃない」
ときっぱり言った。
その嘘ではない声に、なんだか泣きたくなる。