燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 その時、玄関チャイムが鳴った。


「だれ?」

 入ってきたのは、拓海と同い年くらいの優しそうな男の人。
 あたしは拓海の後ろにさっと隠れて、男の人をそっと見る。

 知らない人だ。



 すると男の人は人懐こそうな笑顔を浮かべて頭を下げた。

「はじめまして、つばめさん。僕は工藤晴信といいます」
「は、はじめまして」

 あたしは、じっとその顔を見る。
 あまりに不審そうに見ていたせいか、拓海が苦笑しながら、

「つばめ。工藤先生は僕と一緒に働いている医師で、僕が信頼しているお医者さんなんだよ」
と優しく諭すように言った。

 そういえば、拓海もお医者さんなんだよね。
 あたしと婚約しているのだから、当たり前か。

 でもそのお友達のお医者さんがあたしに何か用?


 あたしが見ていると、工藤先生は笑って、

「怖がらないでいいよ。今日は様子見に来ただけだから。ちょっとお話しない?」
「えぇ……。なんで?」

 あたしが嫌がると、工藤先生は


「あ、そうだ。天馬の秘密の話聞きたくない?」
「聞く!」

 迷わず叫んでしまったあたし。だって拓海のことでしょ?
 聞きたい、聞きたい!

 拓海は、ええっ! 変なこと吹き込まないでくれよ、とやけに焦ってたので、あたしと工藤先生は一緒に笑った。

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